2014年05月12日

守秘義務13

 「だから、返ってこないよ」
 「え?だって、大家さんあれ、返ってくるって」
 「敷金は返って来ない。それでウチはずっとやってんだから」
 「そんな、ヒドくないですか?ずっと借りてましたよね私。信頼関係ないんですか?」
 そこで敷金返還裁判をやったのが、留美最初の裁判だった。弁護士は立てず、やり方をネットで調べただけでやったのである。
 まず、管轄裁判所の争いがある。一体どういうことかと言うと、裁判所を東京にするか大阪にするかということだ。大家は東京に住んでいる。しかし、留美は大阪へ戻った後だった。当然、大家は東京で裁判をやりたい。しかし、留美としてはどうしても大阪で裁判をやりたかった。
 普通は被告(つまり、この場合は大家)の住所で管轄裁判所は決まる。しかし、それが消費者(つまり、この場合は留美)の遠隔地だと、当事者間の衡平を図る上で非常に不利であるということから、大阪でも裁判ができるということになるのである。留美はこの移送の裁判に勝ち、その勢いで敷金返還訴訟も勝った。そして見事に敷金を勝ち取ったのだった。
 「裁判って、案外カンタンなんやな」
 それが、留美の裁判に対する印象であった。
(by川井秋葉)

※注:文中に出てくる人物、団体、建物等はすべて架空であり、フィクションです。





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2014年04月27日

守秘義務12

 小戸部留美は、アイドルになるのが夢だった。
そのために上京した。しかし、なかなか目が出なかった。
 憧れは聖子ちゃん。しかし、結果はアマチュアのロックバンド。担当はボーカル兼MC。
 アイドルになって、金持ちトレンディ俳優とオシャレで豪華な恋愛をする予定が、バンドのギタリストでリーダー(この場合のリーダーって事務所とバンドの連絡係なだけだったりする)、うだつの上がらないテツヤと「安」くて「近」くて「短」時間で済むことを一緒にするということだけだった。
 ある日はスナック菓子の工場見学、ある日はビールの工場見学、そしてまたある日は、シュワシュワドリンクの工場見学。おかげで、シュワシュワドリンクがどうやって作られるのかがよく理解できた。
 「テツヤ、もうデートで工場見学するの飽きたよ」
 「…」
 「もう<工場見学イエイ>読むのやめてよ。トキメカナイ」
 「よっしゃ留美、今日は工場見学じゃないぞ」
 「え?ホント?」
 「電気工作体験だ!」
 「はあ〜。。」
 「しかも、お昼にカレーがタダだっ!」
 「…」
 「俺、ラジオ作って<オードリーのオールナイトニッポン>をリアルタイムで聴くんだあ」
 この生活も疲れた。もう東京なんかに未練はない。大阪へ帰ろう…。
 傷心の留美は、アパートの鍵を大家へ返した。
 「どうもお世話になりました」
 「大阪へ帰っても元気で。達者でな」
 「それで、敷金はいつ返ってくるんですか?」
 「ああ、返ってこないよ」
 「は?」
(by川井秋葉)

※注:文中に出てくる人物、団体、建物等はすべて架空であり、フィクションです。



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2014年03月16日

守秘義務11

 「それでは最初に、宣誓をしていただきます」
 何かプリントが配られた。それを全員、声に出して読む。
 「宣誓。私は、法令に従い、公平誠実に裁判員としての職務を行うことを誓います。平成22年2月21日」
 裁判長を先頭に、法廷までの廊下を歩く。何だかドキドキしてきた。法廷の扉が開いた。
 村田は驚いた。
 書記官、速記官、弁護士、検察官、被告人と刑務官、それから傍聴人に至るまで、全員が起立して待っていたからであった。しかも自分ら裁判員が座る法壇は一段高くなっているようだ。法廷の隅から隅まで見渡せるのである。俺は一体、これから何をするんだろう。
 「着席」の合図と共に、みんなが一斉に着席した。
 最初は検察官が一気に起訴状を読み上げた。何が何だかサッパリ理解ができん。村田は焦った。
 ヤバイ、大変なところに来ちゃったな俺。やっぱ辞退すりゃよかったんかな…。でも、もう遅い。その後、どういうことをやっていたのか、裁判の進行がサッパリ頭に入らなかったのだった。それは、同じ裁判員の留美も同じだった。
 留美は裁判傍聴マニアで、大阪地裁にもよく出入りしていた。しかし今度ばかりは裁判員。傍聴とは勝手が違う。
(by川井秋葉)

※注:文中に出てくる人物、団体、建物等はすべて架空であり、フィクションです。





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