2014年07月25日

守秘義務16

 阿連庄一は、某大手チェーンスーパーの店長である。
 庄一が異動で大阪に引っ越してもう1年になっていた。
 庄一も地裁からの呼出状に頭を悩ませていた。
 「部長。裁判員に呼ばれてしまいまして…。休みをいただきたいのですが」
 「阿連、何言ってんだ。そんなの出るんじゃないぞ」
 「しかし、行かないと罰金になるらしくて」
 「ああ?しょうがねえなあ。じゃあ休みがあるかどうか本部に聞いてやるから」
 「よろしくお願いします」
 はあ〜。選挙だったら行かなくても済むのに。
 阿連は裁判員なんてメンドくさいなと思っていた。それよりも、
 アルバイトやパートの人がちゃんと来るか。奥山さん、ハモとタイを間違えてお客様を怒らせて、きつく言いすぎて泣いてたけど今日はちゃんと遅刻せずに出勤してくれたかな。
 刺身のさくの仕入れ、やはり安く仕入れるにはキハダマグロを多めに仕入れないといけないかな。波新商店のオヤジ、いい魚安く譲ってくれるといいけどな。
 開店までに商品がちゃんと並んでいるか、特売用の長野高原キャベツはちゃんとピラミッド型の陳列ができているのか。いや、副店長の判断でストック陳列にしているかもしれないな。どっちにしろ、ちゃんとお客様にアピールできているんだろうか。
 惣菜コーナーの夕方タイムサービスのこと、メンチカツのタイムサービスは4時がいいのか、5時まで粘った方がいいのか、そのことしか頭になかった。
 こんなに仕事が大変なのに、どうして僕が裁判員なんてやらなきゃいけないんだろう。しかも、仕事を休んでまで。
(by川井秋葉)

※これはフィクションです。文中の人物、建物、団体名等は実物のものとは一切関係ありません。





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2014年07月07日

守秘義務15

 そんな留美も、調査票が届いたときは驚いた。
 どうしよう…。えらいこっちゃ…。
 「ねー、どうするテツヤ。これ」
 「え?行って来たらええんちゃうの?」
 「うーん。せやな。候補なだけやし」
 と、大して考えもせずにホイホイ記入し、ポストに返送した。
 実は、留美も最初は半信半疑だったが
 「日給1万円。交通費別途支給」
 に惹かれたのであった。
 そして、留美も抽選で選ばれてしまった。正直、燃えるぜ。
 「よーし、傍聴マニアの意地、見せたろやないの!」
 と意気込んだ留美は、起訴状を見てさっそく尻込みした。被告が暴力団員だったからである。
 「げ、やくざやん」
(by川井秋葉)


※注:フィクションです。文中の登場人物、団体、建物すべて事実と関係ありません。




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2014年06月19日

守秘義務14

 裁判所の地下食堂で食べる牛すじカレー。
 留美はそこに生タマゴを落として食べるのが好きだった。
 「やっぱ牛すじカレーは大阪にしかない味やな。帰ってきた感じするわ。裁判所でこんなおいしいもん食えるなんて意外やったな」
 朝9時ごろ来て、受付で裁判のスケジュールをチェック。チェックして気になった裁判を傍聴。そして、お昼に食堂で食事をし、午後からまた裁判の傍聴をして帰りにはどこかでお茶して帰宅する、というのが、ここ最近の留美の行動パターンになっていた。
 一体、裁判のどこがそんなにおもしろいというのだろうか?
 留美は、今日もある裁判を傍聴していた。
 被告は女。罪名は覚醒剤取締法違反。
 証言台には、女の上司だという男が立っていた。
 「被告に引っ越しを斡旋しましたか?」
 「はい。しました」
 「引っ越し先は誰にも伝えていないの?」
 「はい、誰にも伝えていません」
 「誰にも伝えていないの言うのは何のため?」
 「また、誰かが被告にクスリや草を持ってくるからです」
 「だから、それらを、つまり、覚醒剤や麻薬を持ってこないようにするために引っ越し先を誰にも教えていないということですか?」
 「はい。そうです」
 「あなたは、被告の子供も預かって、世話もしていましたね?」
 「はい」
 「あなたの奥さんは今、どこにいますか?」
 「刑務所にいます」
 「奥さんは別に刑務所にいて、被告は部下なんですか?」
 「はい」
 「奥さんは、何の罪で刑務所へ?」
 「クスリです」
 「つまり、覚醒剤取締法違反で奥さんは刑務所にいるということですか?」
 「はい」
 ――――--- 続いて、被告。証言台へ。
 被告の女が証言台へ立った。
 「それでは、検察から被告に質問します。被告は尿検査のとき、オシッコが出ないと言っていましたけど、居間に逃げましたね。被告が居間に逃げた後、濡れててアンモニアの臭いがしたんだけど」
 「は?知りませんよ」
 「あなた、子供の前でやりましたね」
 「は?言ってることが解んないスけど」
 「子供が見てたんですよ!あなたがオシッコ飛ばすところを!」
 「は?何スかそれ?」
 ------- 続いて、弁護士からの質問。
 「では、弁護士から質問します。尿検査があったとき、誰と一緒に、どこで検査しましたか?」
 「トイレで、婦人警官と一緒でした」
 「あなたは、そのとき、どういうことをしましたか?」
 「ずっと、オシッコが出るところを見られていました」
 「オシッコは出ましたか?」
 「出ませんでした」
 「ずっとオシッコが出るところを見られて、どうでしたか?」
 「恥ずかしかったです。検査と言え、どうしてこんなことやらなきゃいけないのかと思いました」
 弁護士の質問には素直に答える被告。検察の質問のときには大違いだった。
 このことから、被告の女と上司の男の関係がカンタンに推理できてしまう。それがリアルだからたまらない。
 留美は、裁判傍聴にハマっていた。と、同時に、
 「でも、証拠がないと刑が軽く済んでしまうんやろな」
 留美は刑事裁判の難しさも感じていた。
(by川井秋葉)

※注:これはフィクションであり、文中に出てくる人物や団体名および建物は実物と一切関係ありません。




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